生命保険契約で保険金を受け取ると、死亡を伴わない怪我や病気といった理由で受け取らない限りは何らかの課税があるものです。そして課税される税目は保険料の負担者が誰かに応じて変わってきます。
そのため、生命保険金の課税について考える際には保険料を負担している人は誰かという点がポイントになります。今回は生命保険料の負担者の判定についてまとめてみます。
生命保険金は保険料の負担者に応じて税目が変わる
まず簡単に生命保険金が課税される際の税目について確認しましょう。先述した通り、保険料の負担者に応じて次のように税目が変わってきます。生命保険金に限らず、満期保険金や解約返戻金も同様の考え方になります。
①保険料負担者が保険金受取人の場合
保険金受取人に所得税が課税されます。所得区分は一時所得です。
②保険料負担者が保険金受取人以外の場合
③のケースを除けば保険金受取人に贈与税が課税されます。
③保険料負担者が被相続人で被相続人の死亡に起因して受け取る生命保険金の場合
この場合、保険料負担者が保険金受取人以外である被相続人になるわけですが、被保険者が被相続人で被相続人の死亡に起因して受け取る生命保険金は相続税の課税対象になります。こうやって文章にするとちょっと分かりづらいですね。
このように、生命保険金の課税は保険料負担者に応じて税目が変わってきます。では次に保険料の負担者の判定について見ていきましょう。
生命保険料の負担者の判定
生命保険料の負担者の判定は文字通り、保険料の負担者が誰かという話になります。したがって基本的には契約者が保険料負担者となります。実際、契約者が保険料を払っているケースがほとんどですから。
ただ、たまに契約者とは別の人の口座から保険料が払われているケースがあると思います。共済系の保険あたりは大体は家族の分もまとめて家長が払っていると思います。こういった場合は保険料の負担者は、契約者である家族ではなく、その保険料を払っている家長として生命保険金の課税を考えることになります。
悩ましいのが、契約者が専業主婦などの保険料を払うだけの収入のない人でその人の口座から保険料が払われているケースです。
この場合、その人が以前に相続等でお金をもらっていたとか、専業主婦になるまでに稼いだお金があるとかそういった理由があれば別ですけど、話を聞くと実は夫が自分のお金を妻の口座に移して払っているということが判明したりするものです。そうすると実質的な保険料の負担者は夫ということで生命保険金の課税を考えることになります。
ただ、このような夫から妻へのお金の流れがあったとしても、あくまで夫が妻へお金を贈与して、そのお金で妻が保険料を払ったと主張したとしたらどうでしょうか。この場合は次のような資料等で夫から妻へ贈与があったことを税務署に認めてもらえれば、妻が保険料の負担者ということで生命保険金の課税を考えることが可能です。
- 毎年の贈与契約書
- 過去の贈与税の申告書
- 所得税の確定申告等における生命保険料控除の適用
- 贈与の事実が確認できる通帳の履歴
- 現金贈与ならその事実がわかる資料
まあ、実際は贈与があったんだという主張をとおすのはなかなか難しいような気がしますね。へそくりの名義財産としての課税とかと同様で、家族間の贈与の事実を証明するのは当初から意識してやっておかないと後からそういうことにしようというのはなかなか難しいですよね。
※いや、そもそも後からこういうことにしようというのが間違っているか
まとめ
今回は生命保険金の課税の概要と、その課税を考える際に重要な保険料の負担者の判定についてまとめました。保険料の負担者によっては予期せぬ課税になることもあるので注意しましょう。
わたしは就職する前に所得税と相続税の勉強をしていたので、この論点は勉強した通りに保険料負担者が誰だということで覚えていました。そのため、いざ就職して周りの方が契約者=保険料負担者ということで契約者という言葉を使ってこの課税について話をしているのに違和感を感じたのを覚えています。もちろん契約者が保険料負担者でなければ相応の課税になることは理解した上での言葉のチョイスだったと思います。
まあ、今になって思いますが契約者という言葉のほうがお客様には伝わりやすいのかもしれませんね。今ではたしかに契約者という言葉をチョイスすることの方が多い気がします。
■編集後記
昨日は決算業務をしました。賃上げ促進税制の適用がありましたが、来期からは繰越の話があるのでとりあえず税務ソフトに入力するようにしていかないと地雷を踏みそうで怖いですね。
■一日一新
映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 Audible