生前に土地を売却する契約をしていて、土地の引き渡し(登記や残金を払う日)の前にその土地の元の所有者が亡くなることがあります。
この場合、その土地は、土地としての評価ができなくなり、相続税の負担が重くなる可能性が高いです。
今回は土地の引き渡し前に売主に相続が発生した場合の相続税の取り扱いについてまとめてみようと思います。
売買契約後に相続が発生すると債権としての評価が必要になる
土地の売買契約後に、売主に相続が発生して、その後に土地の引き渡しが行われた場合、その売主の相続税の計算の際に、その土地をどのように評価すべきかという問題があります。
つまり、あくまで相続時点で引き渡しが完了していないのだから土地として評価すべきと考えるのか、それとも売買代金の請求権として評価すべきと考えるのかという問題があるわけです。
この点、具体的な評価方法は法律等で明文化されていません。
ただ、過去に最高裁判決※で債権として扱ってねと判断されていて、その後の裁判でもこの判断を踏襲しています。したがって基本的には債権として扱うことになります。
※最高裁 昭和61年12月5日判決
ちなみに、最高裁の判断の理由は、たとえ相続時点にその土地の所有権は売主にあったとしても、実質は売買代金債権を確保するための機能しかないからとなっています。
一方で、過去に土地としての評価が認められたケースもあります。
※広島地裁 平成23年9月28日判決
このケースでは、契約時に貰った手付金の2倍を払って土地の売買契約を解除した結果、債権ではなく土地としての評価が認められています。
もちろん、全部が全部売買契約を解除すれば土地としての評価が認められるとは限りませんが、参考にはなるかと思います。
※実際、一度解約してその後に契約し直したケースもあるようでこれは債権としての評価をすることになっています
債権として評価することの相続税の計算への影響
さて、売買契約後に相続が発生して、その土地を債権として評価するということは相続税の計算上どのような影響があるのでしょうか。
まず、評価額については、土地でしたら基本的に時価の8割となりますね(路線価評価)。
一方で債権ということは、額面通りの金額で評価することになります。
つまり、売買代金から手付金を引いた金額が評価額になるわけです。
そうすると土地としての評価額<債権としての評価額となるのが通常です。
また、土地でしたら小規模宅地等の特例の適用を検討することができますが、債権として扱うとなるとその時点で小規模宅地等の特例が適用できません。
もちろん、小規模宅地等の特例は基本的に申告期限まで所有継続等の要件があります。
したがって売りに出すような土地について特例が受けられることがそもそも少ないかもしれませんが。
まとめ
今回は土地の引き渡し前に売主に相続が発生した場合の相続税の取り扱いについてまとめてみました。
でも実務でこのようなケースに直面するのでしょうか。
可能性は少ないですが、0とは言い切れませんね。
このようなこともあると、わたしのような税理士は頭に入れておく必要がありますね。
■編集後記
昨日は息子が初めてハイハイをしました。
いつも肩肘をずりずりしながら移動していましたが、ふと気付いたらハイハイになっていました。
これは見たときちょっと感動しました。
でも、その後はすぐにいつも通りのずりずりに戻っていました。
まだハイハイのマスターは先のようです。
■一日一新
こんがり亭