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扶養判定でも使う「合計所得金額」とは

税金

今年の税制改正で基礎控除が10万円増えたことにより、扶養控除等のいわゆる人的控除の適用判定で用いる合計所得金額が10万円増えました。

今回は、この合計所得金額とはどんな金額なのか、そして似た概念である総所得金額等との違いを整理してみます。

合計所得金額とは

合計所得金額とは、ざっくり言えば、
①すべての所得の合計であり、
②繰越控除という特例を適用する前の金額
のことです。

まず①について。
所得税では所得を10種類に分け、それぞれの性格に応じた計算をします。

その計算結果である事業所得や給与所得など、10種類すべての所得を合計した金額が合計所得金額となります。
※特定口座の所得で申告しないものは含みません。退職所得は申告するしないに関わらず含めます

この点は、文字どおり「合計」なので理解しやすいところかと思います。

一方で②の繰越控除という特例を適用する前の金額というのはちょっと曲者です。

今回は株の譲渡損失の繰越控除の例で考えていきます。

ある年に上場株を売って売却損が出た場合、その損失はまずその年の他の株の売却益や配当収入などと相殺することになります。

そして、それでも損失が余った場合は、連続して確定申告をすることを要件に、その損失を3年間繰り越せます。

この手の損失を来年以降に繰り越して、将来に利益が出たときに相殺できる制度のことを繰越控除と呼びます。

ところがこの繰越控除、実際に相殺できても、合計所得金額の計算では「相殺しなかったもの」として扱う点に注意が必要です。

イメージしやすいように簡単に表にしてみました。

2022年2023年2024年2025年
給与所得600万600万600万600万
上場株の譲渡所得100万△300万200万(繰越控除後0)300万(繰越控除後200万)
上場株の申告申告なし申告あり申告あり申告あり
合計所得金額600万600万(譲渡所得と給与所得は相殺できない)800万900万
繰越控除額0300万100万0

この点は意外と盲点になりがちです。

繰越控除制度を利用するには確定申告が必要であり、合計所得金額はあくまで繰越控除を適用する前の金額になりますので、繰越控除をする年の譲渡所得もその年の合計所得金額を構成することになります。

したがって、普段から扶養に入っていた配偶者がある年に繰越控除をするために確定申告をした結果、所得が増えてしまい扶養から外れるなんてことが起こり得ます。

似たような概念の総所得金額等もある

合計所得金額に似た言葉として、総所得金額等があります。

こちらは、合計所得金額から繰越控除を適用した後の金額のことです。

さらに細かく言えば、
「繰越控除を適用した後、特別控除(居住用3,000万控除など)を適用する前の金額」
に当たります。

実務で代表的に出てくるのは、医療費控除の限度額計算(総所得金額等の5%)でしょうか。

合計所得金額に比べると少し影が薄い印象ですね。

ちなみに、所得税の課税標準(税率を乗じる前の金額)を計算するまでの流れをまとめると以下のようになります。

各種所得の計算 → 合計所得金額 → 繰越控除 → 総所得金額等 → 特別控除 → 所得控除 → 課税標準(課税総所得金額など)

○○所得がたくさんあって難しい

今回は合計所得金額と総所得金額等について簡単にまとめてみました。

税理士試験を受験していた頃は当たり前のように覚えていましたが、やっぱり試験から離れると忘れがちですね。

言葉だけで覚えるのは難しいので、計算の流れが一つにまとまっている表がありますので、あれを見るといくらか分かりやすいかなと思います。

毎年、今の時期になると復習して思い出すようにしています。


■編集後記
ライオンズのセデーニョ選手が退団するそうですね。
林選手を獲得しましたし、他にもDHで起用したい選手もチラホラいるからなのでしょう。
まあ、セデーニョ選手はシーズン前半が酷すぎましたね。
個人的にはセデーニョ選手を起用するなら村田選手や仲三河選手にチャンスをと思っているので、これで良かったかなと思います。

■一日一新
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