事業をしている方が亡くなった場合、相続の手続きとあわせて必要になるのが「準確定申告」です。
これは、亡くなった年分(場合によってはその前年分も)の所得税について、相続人が行う申告をいいます。
では、この準確定申告で事業所得が赤字だった場合、その赤字はどう扱われるのでしょうか。
特に相続人が事業を引き継ぐケースでは、「赤字も一緒に引き継げるのでは?」と疑問に思う方も多いかなと思います。
今回は、準確定申告における赤字の取り扱いについて整理してみます。
亡くなった方の赤字は引き継げない
結論から書くと、亡くなった方の赤字を相続人が引き継ぐことはできません。
所得税には「純損失の繰越控除」という制度があり、事業所得などで生じた赤字を、翌年以降の黒字と相殺することができます(正確には先に他の所得との相殺(損益通算)があります)。
そこで、
- 準確定申告で赤字が発生
- 相続人がその事業を引き継ぐ
このような場合、「その赤字を相続人が引き継げるのでは?」と考えてしまいがちです。
しかし、所得税は基本的に個人単位で完結する税金です。
たとえ相続人が事業を引き継いだとしても、亡くなった方の赤字を相続人の所得計算に引き継ぐことはできません。
この点、会社の場合には、合併で一定の要件を満たせば、合併でなくなる会社の赤字を引き継げるケースもありますが、個人事業の場合はそういった仕組みは用意されていません。
繰り戻し還付は検討を
相続人が赤字を引き継げないとなると、「その赤字は完全に無駄になってしまうのか」と思われるかもしれません。
しかし、繰り戻し還付という手続きは検討の余地があります。
繰り戻し還付とは、
死亡年の申告で生じた赤字を、前年の所得と相殺し、すでに納めた税金を返してもらう制度です。
また、
- 死亡年の前年に赤字が発生
- 死亡年の準確定申告で繰越控除を適用しても、なお引ききれない赤字が残る
このような場合にも、その引ききれなかった赤字を前々年の所得と相殺することも可能です。
もっとも、繰り戻し還付をするには、
- 青色申告をしていること
- 申告期限を守っていること
など、いくつかの要件があります。
誰でも適用ができるわけではありませんが、上手く要件を満たすようなら繰り戻し還付を検討してみましょう。
なお準確定申告自体、死亡日から4ヵ月以内が申告期限とされています。
それに間に合うように申告が求められますので早め早めの対応が肝要です。
まとめ
個人事業をしている方が亡くなった場合、準確定申告で赤字が出ても、その赤字を相続人が引き継ぐことはできません。
事業を引き継ぐケースでは、「赤字も一緒に引き継げそうだ」と感じてしまいがちですが、所得税はあくまでその人個人ごとに計算される税金です。
そのため、亡くなった方の赤字を、相続人自身の所得と相殺することは認められていません。
ただし、赤字が出たからといって何もできないわけではありません。
青色申告をしているなどの条件を満たしていれば、繰り戻し還付を使って、過去に納めた所得税の一部を取り戻せる可能性があります。
準確定申告は、死亡日から4か月以内という短い期限の中で対応しなければならないため、「赤字は引き継げない」で終わらせず、税金を取り戻せる余地がないかまで含めて早めに確認しておくことが大切です。
■編集後記
インフルエンサーの脱税が話題になっていますね。
わたし自身、インフルエンサーやYouTuberといった職業の方の申告を実際に見たことはありませんが、SNSや動画に投稿しているからといって、何でも経費になるわけではないですよね。
ときどき「発信しているなら経費でいい」といった意見を見聞きすることもありますが、現実はそう単純ではないですよね。
今回は架空の経費計上もあったようなので、それ以前の問題ですが。。
■一日一新
キャベツとウインナーのコンソメマヨ炒め 調理

