最近話題になっている「食料品の消費税率を0%にする」という話について、少し考えてみます。
なお、ネット記事などを軽く見た限りでは「食料品」という言葉が使われていますが、
実際に0%になると想定されるのは、現在、軽減税率(8%)が適用されている飲食料品のことのように思います。
この記事でも、その前提で話を進めます。
「実質的な大増税」で、経営が非常に苦しくなるらしい
今日、ネットで
「食料品の消費税をゼロにすると飲食店が潰れる」
という内容の記事を読みました。
はて、どういう理屈で潰れるのだろうかと思いながら読み進めたのですが、
正直なところ「ムムッ」と感じる内容でした。
というのも、飲食店の場合、店内飲食の売上はもともと10%課税であり、
今回の改正の対象外になるはずです。
そうだとすると、記事に書いてあるほど深刻な問題かなという印象を受けました。
もちろんテイクアウト専門店などであれば、
記事に書いてあるようなことも想定されるとは思いますが。。
もっとも、わたしの感覚がズレている可能性もあるので、
試しに Gemini にも同じような質問を投げてみました。
すると、返ってきた答えは次のようなものでした。
「飲食料品の税率を0%にする」という議論は、一見すると飲食店にとって食材を安く仕入れられるメリットがあるように思えます。しかし、日本の消費税制度(仕入税額控除)の仕組み上、**『実質的な大増税』**になり、経営が非常に苦しくなるリスクがあります。
その理由として挙げられていたのが、次の3点です。
- 納税額が大幅に増える(仕入税額控除の消失)
- 外食と自炊の「価格差」が広がり、客足が遠のく
- 事務負担とシステムコストの増大
2については、「たしかに、そういう考え方もあるな」という印象です。
3についても、たしかに面倒にはなりますが、これは飲食店に限った話じゃないよな、という印象です。
個人的に一番引っかかったのは、
1の「納税額が大幅に増える」という点でした。
本当に税負担はそんなに増えるのか
飲食店の場合、店内飲食の売上は現在も10%課税であり、
ここはおそらく今回の改正の対象外です。
影響が出るとすれば、テイクアウトの売上や、食材などの仕入部分になります。
まずは分かりやすく、テイクアウトを行っていない飲食店を想定して、
現状と「飲食料品の税率が0%になった場合」を比べてみます。
| 項目 | 現状 | 改正後 | 差額 |
| 売上(10%) | 1,100(100) | 1,100(100) | 0 |
| 食材仕入(8%→0%) | 324(24) | 300(0) | ▲24 |
| 家賃(10%) | 165(15) | 165(15) | 0 |
| 人件費(対象外) | 200 | 200 | 0 |
| 諸経費(10%) | 110(10) | 110(10) | 0 |
| 消費税の納税額 | 51 | 75 | 24 |
| 手残り | 250 | 250 | 0 |
この場合、消費税の負担自体は増えますが、手残りは変わらないという結果になりました。
まあ、素直に食材仕入が消費税の分だけ減るかというとそうではないと思うので、
その分は手残りが減る形になるのでしょう。
次に、多くの個人経営の飲食店等では、
簡易課税なり2割特例を適用して消費税を計算していると思いますので、
簡易課税(4割納税)を前提にもう一度シミュレーションをしてみます。
| 項目 | 現状 | 改正後 | 差額 |
| 売上(10%) | 1,100(100) | 1,100(100) | 0 |
| 食材仕入(8%→0%) | 324(24) | 300(0) | ▲24 |
| 家賃(10%) | 165(15) | 165(15) | 0 |
| 人件費(対象外) | 200 | 200 | 0 |
| 諸経費(10%) | 110(10) | 110(10) | 0 |
| 消費税の納税額 | 40 | 40 | 0 |
| 手残り | 261 | 285 | 24 |
簡易課税の場合、納税額は「売上」だけで決まるため、
食材仕入の消費税が0になっても納税額は増えません。
結果として、食材が安くなった分だけそのまま手残りが増える計算になります。
次にテイクアウト専門店で考えてみます。
まずは原則課税を前提にしてシミュレーションを行います。
なお、飲食料品の売上は、非課税売上として0%になるものとします。
| 項目 | 現状 | 改正(0%分を値下げ) | 改正(売上は据置) |
| 売上(8%→0%) | 1,080(80) | 1,000(0) | 1,080(0) |
| 食材仕入(8%→0%) | 324(24) | 300(0) | 300(0) |
| 家賃(10%) | 165(15) | 165(15) | 165(15) |
| 人件費(対象外) | 200 | 200 | 200 |
| 諸経費(10%) | 110(10) | 110(10) | 110(10) |
| 消費税の納税額 | 31 | 0 | 0 |
| 手残り | 250 | 225 | 305 |
この場合は、改正後に売上を消費税分だけ素直に値下げしたとすれば、
家賃や諸経費で払った消費税分だけ、手残りが減る結果になりました。
※計算の詳細は少し難しいので省略
一方で、改正後も値段を据え置くなどして売上が同じであれば、
むしろ手残りは増える結果になりました。
そして、最後に簡易課税(3割納税)の場合でも同様にシミュレーションをしてみます。
| 項目 | 現状 | 改正(0%分を値下げ) | 改正(売上は据置) |
| 売上(8%→0%) | 1,080(80) | 1,000(0) | 1,080(0) |
| 食材仕入(8%→0%) | 324(24) | 300(0) | 300(0) |
| 家賃(10%) | 165(15) | 165(15) | 165(15) |
| 人件費(対象外) | 200 | 200 | 200 |
| 諸経費(10%) | 110(10) | 110(10) | 110(10) |
| 消費税の納税額 | 24 | 0 | 0 |
| 手残り | 257 | 225 | 305 |
こちらも、傾向としては原則課税の場合と同じですね。
結局のところどうなんだろう
今回、なんとなくネットの記事を読んでムムッと思い、
勢いでこの記事を書きましたが、表をつくるのが意外と大変でした(ちょっと後悔)。
たぶん、数字は間違っていないように思いますが。。
わたしの印象としては、
これでお店が潰れるというのはちょっと言い過ぎなように思いますが、どうでしょうか。
もちろん、食材仕入が改正後にそっくりそのまま値引きされるとは限りません。
ただ、商品の値段をある程度据え置くなどして売上を維持できれば、
テイクアウト専門店でも影響は小さくできそうです。
小さいお店なら、
自宅兼店舗で家賃がかからない、というケースもあるでしょうし。
※消費税がかかる支払いが少なければ、それだけ影響が少ない傾向がある
それに消費者目線で考えても、
仮にテイクアウト専門店が、改正後に消費税分をそのまま値引きしていなかったとしても、
「まあ、そういうものか」と受け止める人が多い気がします。
それだけで利用しなくなるかというと、疑問です。
まあ、外食控えが起きるなど、
現時点では想像しきれていない影響もたくさんあるのでしょうが、
少なくとも「税負担が増大することで経営危機になる」という話ではないように思いますが、どうでしょうか。
とはいえ、
「とにかく面倒なので、こんな改正はしてほしくない」
というのが正直な本音です。。
【追記】
今回の記事では、件のネット記事を参考に、
飲食料品の売上が「非課税売上」になるという想定でシミュレーションを行いました。
ただ、あとから考えてみると、
非課税にするのではなく、軽減税率の税率そのものを0%に改正するという形でもよいのではないか、という気もしています。
※もしくは免税売上でもいいのかな
この場合、ケースによっては還付し放題といった格好になるのかも分かりませんが、
実際には、過度な消費税の還付についてはすでにさまざまな制限が設けられています。
その制限に引っかからないのであれば、
普通に還付や控除を行えばよいだけの話のように思いました。
実際に、消費税を支払っていること自体は事実なわけですし。
一方で、非課税売上として扱ってしまうと、
その後の消費税の納税義務の判定にも影響が出てきます。
そうなると、将来、税率を元に戻したときに、
制度の趣旨とは少しズレた結果が生じる可能性もあるように思います。
いずれにせよ、仮に「飲食料品の税率0%」が実現するとしたら、
どのような制度設計になるのかは、少し気になるところです。
とはいえ、本文でも書きましたが、
「やらないでくれるのが一番」というのが本音です。
物価高対策と言うのであれば、
社会保険料率の引下げや、素直に現金給付でいいのでは、と思ってしまいます。
■編集後記
今日は、風がとんでもなく強い一日でした。
車で小学校の前を通りかかると、
舞い上がる砂埃の中でも、子どもたちは元気に校庭を走り回っていました。
今は、目や口に砂が入ると嫌なので敬遠してしまいますが、
思えば自分も昔は、そんなことなどお構いなしに夢中で遊んでいたものです。
子どものバイタリティには、つくづく驚かされますね。
■一日一新
銀座「四宝堂」文房具店 (5) Audible

