相続した財産を売却した場合に適用できる特例に取得費加算の特例というものがあります。文字通り譲渡所得の計算で取得費を加算、つまり譲渡所得の計算上、取得費と譲渡費用に追加して控除できる金額が増えるというものです。
相続と相続財産の売却が連続したことで相続税と譲渡所得税の負担が生じることになりますが、これらをある種の二重課税と捉え譲渡所得税の計算上、相続税の負担を考慮しようという趣旨の制度です。
今回は取得費加算の特例についてまとめてみたいと思います。
取得費加算の特例の概要
取得費加算の特例とは冒頭でも書いた通り、譲渡所得の計算上、控除できる金額を増やすというものです。譲渡所得は基本的に「収入金額-取得費-譲渡費用」で計算をしますが、取得費加算の特例を適用すれば次の計算式で計算した金額も追加で収入金額から控除できます。
その人が負担した相続税額×売却した財産の相続税評価額÷その人の相続税の課税価格
計算式のとおり、財産を売却した人が負担した相続税額を上限として、相続した財産のうち売却した財産の価額がどのくらいかで加算する金額が決まるようになっています。
適用要件は次の要件があります。
- 売却する財産を相続又は遺贈で取得していること
※相続時精算課税適用財産や生前贈与加算の対象財産も含みます - 相続税を納めていること
- 相続後3年10ヵ月以内に売却していること
- 取得費加算の特例を適用して確定申告をすること
また、あくまで所得税の譲渡所得の計算の特例なので、売却する財産が譲渡所得を形成する財産(土地、建物、株など)でないと適用できません。
※むしろ株の売却でも適用できることが盲点になりやすいかもしれません
取得費加算の特例は適用できるとそれなりの節税効果になりますので、もし相続した財産を相続後に売却するなら適用を検討しましょう。
小規模宅地等の特例との関係
次に、相続税の小規模宅地等の特例と取得費加算の特例との関係について簡単に触れたいと思います。
小規模宅地等の特例は一定の被相続人なり相続人の生活基盤となっている土地について、その生活基盤を守るために、そういった土地については相続税計算上の評価額を8割なり5割減額しましょうという制度ですね。
したがって、当たり前ですが、売却する財産が土地の場合にここでの内容を検討する必要があります。
まず、注意したいのが、取得費加算の特例の計算では小規模宅地等の特例適用後の金額を基準に計算するという点です。
小規模宅地等の特例を適用した財産を売却して取得費加算を適用する場合、取得費加算の金額が評価減を受けたことで減少してしまうのです。複数の小規模宅地等の特例が適用できる土地があったとして、そのうち売却予定のものがあるなら、その売却予定の土地については小規模宅地等の特例を適用しないほうが税負担が減る可能性もあります。
もちろん、取得費加算のことだけを考慮して小規模宅地等の特例を適用する土地を決めるわけにはいきませんが、検討項目の一つとして数えていいかなと思います。
また、小規模宅地等の特例には、基本的に相続税の申告期限まで所有継続要件があります。仮に申告期限までに売却してしまうと小規模宅地等の特例が適用できないということになるので注意しましょう。
まとめ
今回は取得費加算の特例について確認しました。取得費加算は意外と節税効果が大きいので適用できるようなら積極的に活用しましょう。
ご高齢の方で所有している不動産を売却するか検討している場合、どうせなら相続後に相続人が売却して取得費加算の特例を適用したほうがトータルではお得かもということで、とりあえず売却は保留になったりするものです。
まあ、売却自体が将来上手にできるか未知数でもありますが、ある程度いつでも買い手が見つかるような場合で、近い将来相続が見込まれるなら、こういった判断をしてもいいかなと思います。
■編集後記
最近息子が夜泣きというか、一度寝てしばらくしてからミルクを飲みたくて泣き出すといったことが続いています。
その結果いつも1,000mlのミルクで足りていましたが、もう一杯飲むようになりました。
久しぶりに、深夜に息子をだっこしてあやしましたが、生まれた当初も大変だったなと思い出しました。
早くまたぐっすり眠ってくれるようになってほしいです。
■一日一新
新しいパソコン(SurfaceLaptop7)でブログ執筆