今回は相続税の取得費加算を適用する際の注意点として、相続した財産の売却のタイミングについて取り上げてみようと思います。
相続税の取得費加算の計算で用いる相続税額とは
相続税の取得費加算とは、次の3つの要件を満たす場合に、その売却した財産の譲渡所得の計算で、納めた相続税のうちその財産に対応する金額を取得費に加算しますよという制度のことです。
- 相続や遺贈で財産を取得していること
- 相続税が発生していること
- 相続開始後3年10ヵ月以内にその財産の売却をしていること
この特例の適用を検討する場合、相続開始後3年10ヵ月以内という期限がやはり注目されがちですが、実は財産の売却が早いと特例が受けられないといったことがあります。
それは、この特例計算のもとになる相続税額が次のどちらか遅い日までに確定した金額(相続税の申告をした金額)と定義されているところに理由があります。
- その財産を売却した年の年末
- 相続税の申告期限
では、次に具体的にどうのようなケースだと特例計算に支障が出てくるのか見ていきましょう。
財産の売却タイミングに注意しよう
通常のケースだと財産の売却は相続税の申告が済んでから行うことだと思います。
この場合は、財産の売却年の年末までに相続税の申告は済んでいる、つまり相続税額が確定しているので特に問題なく取得費加算の計算が可能です。
また財産の売却が早かったとしても、財産の売却→相続税の申告→売却年の年末という順で日程が進むのなら、売却年の年末までに確定している相続税額がありますので特例計算に支障はありません。
一方で財産の売却→売却年の年末→相続税の申告という順で進むときは注意が必要です。
たとえば、2024年12月に相続した財産の売却をしたとして、その相続の申告期限が2025年4月1日、相続税の申告を2025年3月30日に行ったとします。
このケースだと、その相続した財産の売却収入は、2024年分の確定申告の対象になり、その申告期限が2025年3月15日となります。
そうすると、所得税の申告期限時点では、取得費加算の計算に用いる相続税額がまだないという状態になり、当初の所得税の申告では特例が適用できないことになります。
一応、このケースだと、相続税の申告書を提出した日の翌日から2ヵ月以内に更正の請求という手続きをすることで特例計算の適用が可能になります。
※先述した相続税額の定義に当てはめると、2025年4月1日時点で確定している相続税額があるため
さらに、相続税の申告が期限後になるときも注意が必要です。
上記の例で言えば、相続税の申告が2025年の4月10日になってしまったケースです。
この場合だと、特例計算で用いる相続税額は、売却年の年末(2024年12月末)か相続税の申告期限(2025年4月1日)のどちらか遅い日までに確定している相続税額となります。
そうすると、相続税の申告期限である2025年4月1日までに確定している相続税額があれば特例の適用ができることになりますが、2025年の4月10日に相続税の申告をして相続税額が確定しているので、特例計算で用いる相続税がないということになります。
結果的にこのようなケースだと取得費加算の計算ができないことになります。
ちなみに、相続税の申告が期限後になったとしても、財産の売却→期限後申告→売却年の年末という日程なら問題はありません。
これは、売却年の年末までには期限後申告で相続税額が確定しているためです。
まとめ
今回は相続税の取得費加算を適用する際の注意点として、財産の売却タイミングについて取り上げてみました。
たまに相続した財産を相続税の申告前にササっと売却してしまったという話は耳にします。
売却のタイミングによっては相続税の取得費加算の計算にも影響があるので注意しましょう。
それに、売却する財産が土地の場合には小規模宅地等の特例にも影響がでることがあります。
小規模宅地等の特例には、相続税の申告期限まで所有していないといけないといった要件があるためです。
この点も十分に注意しましょう。
■編集後記
昨日は息子が予防注射の日でした。
予防注射はギャン泣きだったようですが、先生から(発育状況は)順調ですと太鼓判を押してもらったそうで妻が帰ったとき嬉しそうでした。
ついでに身体測定もしてもらいました。
だいぶ身長にしても体重にしても伸びるペースが落ち着いてきたようです。
■一日一新
タフグミ キウイスパーク