中小企業庁が2024年11月から手形のサイトを60日以内にするよう要請しています。ここでいう手形とは約束手形だけでなく、電子記録債権、一括返済方式による下請け代金の支払いも含まれます。
またサイトという言葉に馴染みがない方もいると思いますが、約束手形でいえば、その約束手形が交付されてから満期日までの期間を言います。
今回はこのことについて取り上げてみたいと思います。
以前から長期手形は問題視されていた
この手形のサイトが長期に及ぶ問題は以前から問題視されていて、中小企業庁も中小企業の取引適正化の重点課題の1つに「支払条件の改善」を位置づけてきました。
具体的には1966年から繊維業は90日、その他の業種は120日を超えるサイトの手形等を、下請法が規制する「割引困難な手形」等に該当するおそれのあるものとして指導してきたという記述が中小企業庁のHPで確認できます。
実際、わたしが関与したことがある繊維系の製造業の会社や建設業の会社の手形取引の履歴を見ていると、この期限を守った約束手形なり電子記録債権が発行されています。
こうやって実際の取引事例を見て中小企業庁の指導内容が守られているのを見ると、この指導もちゃんと拘束力があるのかなと思ったりするところです。
さて、この手形のサイトの90日なり120日という期間ですが、やっぱり売主側から見れば相当の負担です。
商売の基本の流れはモノを仕入れて、販売して、代金を回収するという流れになりますが、代金の回収の前に仕入があり、日々の経費の支払いや借入金の返済もあります。90日のサイトということは販売してから3ヵ月後に代金の入金があるということです。仕入の時期から考えればさらに長いことになります。
これだとそりゃ資金繰りに悪影響が出ます。
そのため、約束手形や電子記録債権では割引という、満期前に金融機関に利息を払う代わりに債権を買い取ってもらう行為が行われていますが、この利息も馬鹿になりません。
このように、長期手形は売手には不利なもので、逆に買手にとって有利なものになります。
それに製造業や建設業等のサプライチェーンを考えた際に、本来は買手の方が売手より資金調達コストが低いので、サプライチェーン全体を考えればそれらコストは買手が負担した方が合理性があるといえます。
そんなこんなで以前からこの問題が問題視されてきたのですが、2024年の4月末に中小企業庁が各事業者団体等に対して手形のサイトを60日以内にするよう要請文を出したのです。
2024年11月以降は手形のサイトに注意しよう
これまでの中小企業庁の指導内容がある程度の拘束力があることを見ると、今回の要請の内容もキチンと遵守する必要があるでしょうし、本来そうあるべきかなと思います。
2024年11月から受け取った手形のサイトが60日以内になっているか確認をするようにしましょう。また自身が手形を発行する場合も60日以内のサイトになっているように確認をしましょう。
なお、中小企業庁は各業界団体や金融機関、これらを監督する省庁等に対して、今回の要請分を踏まえ、発注者が支払い手段の適正化を図ることや手形サイトの短縮に取り組む事業者の資金支援に取り組むこと等も要請しています。
今までの慣習を変えることは難しいとは思いますが、少しずつ全体を巻き込んで改善していけるといいですね。
まとめ
今回は2024年11月から手形のサイトが60日以内になることについて取り上げました。
そういえば、約束手形は2026年を目途に廃止の方向で検討するようなことを政府が発表していたと思います。代わりは電子記録債権が推奨されるとか。
税理士としては約束手形も嫌ですが電子記録債権も嫌ですね。なんかよくわからない手数料が引かれていますからね。真面目に経理しようと思うとそれなりに手間になります。
それに、わたしの印象では約束手形なり電子記録債権を受け取った業者はほぼ間違いなく発行後すぐに割引をしています。そのため金融機関にとられる利息の金額も馬鹿になりません。
わたし自身、手形をもらう機会がないので、よくわからないのですが、ある程度資金繰りに余裕があってもすぐに割引をしていることを多く見かけます。このあたりがいつも謎ですね。そういう縛りでもあるのかなと思ったりします。
利息がもったいないと思うのですが、これはやっぱり製造業とか建設業といった仕入があったり、発注から販売までの期間が長い業種の経営者にならないとわからない感覚なのかもしれません。
■編集後記
昨日も雷がすごかったですね。
東武東上線も帰宅の時間は大変だったらしいです。
池袋駅で帰宅者が並んでいる写真を見ました。
こういうのを見ると通勤のない生活ができてよかったなと思います。
通勤しなくていいように頑張ろうと思います。
■一日一新
レッドホットチキン ケンタッキー