税理士が相続税の申告の依頼を受けて遺産分割協議書を作成する場合、基本的には借入金などの債務に対する分割内容も遺産分割協議書に織り込むことと思います。
一方で民法上は、債務は遺産分割の対象にならないという考え方が通説です。
今回は債務の遺産分割に対する民法と相続税法の考え方の違いについてまとめてみようと思います。
民法上は債務は遺産分割の対象にならない
民法上、遺産分割の対象になるのはプラスの財産だけで、マイナスの財産である借入金などの債務は遺産分割の対象にならないと解されています。
では、被相続人の債務がどのように相続人に承継されるかというと、各共同相続人の相続分に応じて承継することになります。
これは債権者保護の考え方がその根底にあります。
つまり特定の相続人だけがプラスの財産を相続し、資力のない相続人に債務だけを負わせてしまうような分割内容が相続人の間で決定されたとして、その内容が債権者にとっても有効では、債権者は困ってしまうのでこういったことがないように配慮されているわけです。
一方で、遺産分割協議での債務の遺産分割の内容は相続人間では有効ですので、基本的には遺産分割の内容に沿って債務を承継した人がその後の債務の履行をしていく必要があり、上述した取り扱いを持って後から他の相続人に債務を履行しろと主張することはできません。
相続税法上の債務の遺産分割に対する考え方
相続税法では被相続人の債務は債務控除の対象になります。債務控除とは相続税の計算の際にプラスの財産から控除する金額のことで、債務控除が多ければ相続税の負担は減ります。
そして、債務控除として計上する金額は「その者の負担に属する部分の金額」と定められていて、一般的には遺産分割協議で定めた金額がその金額ということになります。
したがって相続税法の世界では遺産分割協議書に債務の承継についても明記をして、その内容に沿って相続税の申告をすることになり、税理士が遺産分割協議書の作成に関わる場合は債務の遺産分割の内容も協議書に織り込むこむことがほとんどのはずです。
まとめ
今回は債務の遺産分割に対する民法と相続税法の考え方の違いについてまとめてみました。
税理士が、遺産分割協議書の作成に関わる場合は、基本的に債務についても遺産分割をする方向でまとめていきます。
そこで決めた債務の分割内容は、民法上、相続人間では有効ですが、債権者間では有効とはならないという理解になります。
一定の債権者の合意を得ることで、債権者間でも遺産分割の内容が有効となることはありますが、合意がなければ、相続人が承継したと認識していない債務の支払いを求められるリスクも抱えているということになります。
■編集後記
昨日はライオンズの西口新監督の就任会見をたまたまライブで視聴しました。
西口新監督のひょうひょうとした発言が印象的でした。
すでに鳥越ヘッドコーチの就任が報道されていますが、他の空いているポストに誰が抜擢されるのか楽しみです。
■一日一新
西口新監督 就任会見 視聴