今回は税務調査でもよく問題にあがる給与と外注費の区分について、これが否認されると怖い理由をまとめてみたいと思います。
給与と外注費の税務上の取り扱いの違い
まず給与と外注費の税務上の取り扱いの違いについて確認します。
最初に支払う側の消費税の計算上、仕入税額控除（消費税の計算で経費にすること）ができるかどうかという違いがあります。インボイス制度が始まったので外注費に該当したとしても制限がかかるということもありますが、そもそも論として、給与は仕入税額控除ができず、外注費は仕入税額控除ができます。
次に代金を貰う側の所得区分が違ってきます。給与ならそのまま給与所得ですし、外注費なら事業所得か雑所得になります。そして給与所得なら源泉徴収がありますし、外注費なら源泉徴収が基本的にはありません。
この点は、支払う側からすれば給与なら源泉徴収をして納付をする義務があり、年末調整が必要になることもあります。一方で外注費なら基本的には源泉徴収が不要なので納付もしないでよくなるということです。
最後に税務ではありませんが社会保険の取り扱いも変わってきます。つまり給与なら社会保険の加入が必要になることもありますし、外注費なら社会保険の加入はしなくてよくなります。
この内容を表にまとめたのが下記の表です。
| 項目 | 給与 | 外注費 |
|---|---|---|
| 仕入税額控除 | なし | あり |
| 源泉所得税 | あり | 基本はなし |
| 所得税の所得区分 | 給与所得 | 事業所得又は雑所得 |
| 社会保険 | ありかも | なし |
一般的には、支払う側は外注費になるべくしたいと考えるものです。仕入税額控除もできますし社会保険も加入しなくてよければ相応の負担軽減になるためです。
建設業界では一人親方という言葉があり、実際わたしも一人親方の方の税務申告をたくさん見てきましたが、こういった立場の方が増えている背景には、この税金や社会保険の取り扱いの違いがあるとも言えそうです。
ただ、意外と使用人側としても社会保険に加入しなくてよければ手取りが増えるとか、確定申告で色々経費に計上できると言ってあえて外注費扱いを望むような声も聞いたりします。あくまで社長経由で「彼も外注扱いがいいって言っているから」と聞かされただけなので本当かどうかは定かではありませんが。
外注費が給与として否認されると怖い理由
そんな給与と外注費ですが、税務調査で支払う側が外注費として経費に計上していたところ、この支払いは給与ですねと否認を受けることがたまにあります。
この否認を受けてしまうと、上述したように、仕入税額控除ができないし源泉徴収が必要になります。そしてそれらを理由にペナルティの税金がかかるといったことにもなります。
また、仮に代金を貰う側が役員だったとすると、法人税の所得計算上、その支払いが経費にできないといったことにもなり得ます。
これを俗にダブルパンチとかトリプルパンチとか言ったりしますが、税理士としてはかなり怖い否認事項に数えられています。
それに、一般的には源泉徴収が必要と言っても貰う側から後日源泉徴収額を徴収できるかどうかは確実ではありません。流れ的には、とりあえず源泉徴収額を計算して税務署に納める、その後に当事者同士で源泉徴収額を精算してねということになります。
たとえ回収できたとしてもなんとなく後味の悪いことになってしまうことは多いです。
それに状況によっては社会保険の加入についても検討が必要となるわけなので、これではトリプルパンチではすまないとも考えられます。
そのため、外注費の支払いが給与として否認されることは絶対に避けるべきことと言えます。
まとめ
今回は外注費の支払いが給与として否認されると怖い理由を書いてみました。
この否認は税理士としてはなるべく避けたいところです。
例え名目上、外注費として払い経費に計上していたとしても実態を見ての判断がされます。
具体的には契約形態はもちろんのこと、代替性、指揮監督性、危険負担、材料等の支給等を総合的に見て判断されることが多いです。
最近はインボイスが始まったので、インボイスのやりとりがあれば外注費扱いでOKといった見解も見聞きします。たしかに、これを税務調査で否認するなら貰う側では還付申告ができる可能性が高いので税務署としてもそこまでしてもなと考えるのかもしれないです。
ただ絶対ではないはずですし、インボイス云々の前の話として今回取り上げた給与と外注費の区分の話があると考えるのが本来の考え方かなと。
給与と外注費どちらに該当するかは事前によく検討して区分が曖昧な場合は否認のリスクも当事者双方で共有しておくことをオススメします。
■編集後記
昨日はおいしい給食の映画を見てきました。
内容は期待していた通りでした。見たかったものは見れたかなと。
いつもはららぽーとのTOHOシネマかイオンシネマに行っているので、ユナイテッドシネマは初でした。ここのポップコーンはTOHOシネマのものより美味しい気がしました（バター醤油があるのもうれしい）。
それに提供がやけに早かったのも印象的でした。空いていたからかもしれませんが。その点もよかったです。
■一日一新
ユナイテッドシネマ 新座
おいしい給食 Road to イカメシ
