貸主が会社で借主が個人の関係で、土地の貸し借りをする場合の個人側の課税については、前回まとめてみました。
個人が会社から土地を借りた場合の税金の取り扱い
今回は、同様のケースで会社側の課税の取り扱いについてまとめてみます。
適切な権利金のやりとりがないと権利金収入の認定課税の可能性がある
会社が個人に土地を貸す場合で、その土地について借地権が生じる場合、通常は権利金というお金のやりとりをする必要があります。
これは、貸主からすると、土地を貸して建物が建てられてしまうと、そう簡単にその土地は返してもらえないことになっているため、その代わりとして権利金というある程度まとまったお金のやりとりをすることになっています。
そこで、次の3パターンに該当しない限り、権利金収入の認定課税と言って、本来もらうべき権利金を貰ったものとして法人税が課税されます。
- 適切な額の権利金を貰っている場合
- 適切な額の権利金を貰わない代わりに、相当の地代と呼ばれる程度の地代を貰っている場合
- 無償返還の届出書を税務署に提出している場合
認定課税の金額は、簡単に言えばその土地の価額に借地権割合という割合を乗じて計算(実際はもっと複雑です)した金額に、貰った権利金があればその金額を控除して算定するイメージです。
たとえば、1億円の土地(借地権割合は60%)を権利金なし、地代は世間相場程度で貸したとして、無償返還の届出書を提出していないとなると、6,000万円の権利金収入があったものとして法人税が課税されてしまうわけです。
実際は特にお金を貰っていないのに6,000万円も収入があったものとして扱われるというのはなかなか怖いですね。
なお、注意点としては、使用貸借契約でも無償返還の届出書が提出されていなければ権利金収入の認定課税はされます。
私法上は使用貸借契約だと借地権は生じないということになっていますが、会社が絡んでくると借地権が生じたものとみなされてしまいますので注意が必要です。
賞与として扱われると悲惨
実はこの会社に対して権利金収入の認定課税がされるケースですが、もうひとつ論点があります。
それは法人税の世界でも複式簿記の考え方があるのですが、権利金収入という収入があったけれど、そのお金は何に使われたのかという話です。
権利金収入はあったけどお金を貰っていないので、お金が増えたという扱いにはできず、代わりに何かに使ったと法人税では考えるわけです。
そこで、借主が会社の役員や従業員なら賞与として使ったと扱い、それ以外の人物なら寄付金として使ったと扱うことになります。
なお、ここで収入と経費が両建てされるならプラマイゼロじゃんと考える人もいらっしゃるかもしれませんが、そこは上手くできていて、賞与として扱うなら、役員や特別な使用人に対する賞与は経費として認めてもらえない取り扱いがありますし、寄付金もほぼほぼ経費にできないような計算をすることになっています。
したがって、結果的に収入だけが増えるような仕組みになっているわけです。
また、賞与として扱われるともれなく源泉徴収の話が生じてきます。そうするとペナルティも含めて賞与に対する源泉所得税を納める必要が生じますのでやっかいです。
実際のところ、このような取引をすることがあるとすれば同族会社とオーナー社長という関係でしかないのかなと思います。
そこで権利金収入の認定課税がされると、権利金収入の認定課税だけでなく、上述したように源泉納付漏れも指摘されてしまいます。
非常にやっかいなので注意したいですね。
まとめ
今回は会社が個人に土地を貸す場合の税金の取り扱いについてまとめてみました。
借地権が絡む課税は複雑ですね。
収入がないのにあったものとして扱われる類の課税はやはり怖いです。納税資金に困りますので。
まあ、今回の事例はそう出会うこともないと思いますが。
■編集後記
さぼリーマン甘太朗というドラマを見ています。
まだ数話しか見ていませんが、甘味処に行きたくなりました。
特にあんみつを無性に食べたくなっています。
■一日一新
メガホットカフェラテ ローソン
さぼリーマン甘太朗 Netflix