相続税の課税がされる贈与として、生前贈与加算の対象になる贈与と相続時精算課税の対象になる贈与があります。
生前贈与加算の対象になる贈与とは、暦年贈与(要は通常の贈与)で相続前3年~7年(順次延長)内に行われた贈与のことを指します。
こういった贈与は生前に贈与をして相続財産を減らすことで税負担を意図的に減らすことを防止するため、相続前の一定期間に行われた贈与について、いわゆる持戻し計算をして相続税の課税対象となります。
一方で相続時精算課税の対象になる贈与とは、相続時精算課税制度の届出をしてから行う贈与のことを指します。こちらはその名前のとおり贈与といっても相続税が課税されることが前提の贈与となります。
これら2つの贈与ですが、相続税の計算の際に、債務控除を適用する場合は取り扱いが変わってきます。今回は相続税が課税される贈与と債務控除の関係についてまとめてみます。
生前贈与加算の対象になる贈与について債務控除は適用できない
相続税の計算の際に、債務控除の対象になる財産は「相続又は遺贈により取得した財産」とされています。
したがって生前贈与加算の対象になる贈与については、あくまで贈与により取得した財産であるため、債務控除の適用ができないということになります。
たとえば、ある相続人が相続税評価額が2億の賃貸不動産と、賃貸不動産に対応する借入金3億を相続し、生前贈与加算の対象になる贈与として預金1,000万を貰っていたとすると、その相続人の課税価額は1,000万となるわけです。
借入金のうち1億円は賃貸不動産の評価額から控除できない金額となりますが、この金額を生前贈与加算の対象になる贈与の価額からは控除できません。
単純にプラスの財産がいくらで、マイナスの財産がいくらだからたし引きいくらが課税価額だと考えていると、思いのほか課税価額が高くなることもあるので注意が必要です。
相続時精算課税の対象になる贈与について債務控除は適用できる
一方で相続時精算課税の対象になる贈与については債務控除が適用できます。
これは、上述したように債務控除の適用ができる財産は「相続又は遺贈により取得した財産」とされていますが、この規定の続きとして相続時精算課税制度を適用した贈与により取得した財産も債務控除が適用できることが書かれているためです。
したがって、上述したケースで仮に贈与を受けた預金について相続時精算課税制度を適用していたなら、その相続人の課税価額は0となります。
このことは、相続税の申告書の第1表を見てみるとわかりやすいかなと思います。課税価格の計算の欄に④純資産価額という金額がありますが、この金額は①相続財産+②精算課税適用財産-③債務控除で計算されマイナスの場合は0となります。
そして生前贈与加算の金額を純資産価額に加算する形で各相続人の課税価格が計算されるという仕組みになっています。
相続税の申告書からも生前贈与加算の金額からは債務控除が適用できないことが読み取れます。
まとめ
今回は相続税が課税される贈与と債務控除の関係についてまとめてみました。
今年は、贈与税の大きな改正があって、生前贈与加算にしろ相続精算課税にしろ関心が高まっていると思います。
贈与者に債務がある場合はこのような論点も踏まえて贈与の方法を選択してもいいかもしれません。
■編集後記
今朝、犬の散歩をしていたら、道端に入れ歯が落ちていました。
愛犬は興味津々でしたがさすがに汚いので触らせませんでした。
どういう経緯で道端に入れ歯が放置されているのか。
近所のじいちゃんばあちゃんが散歩途中に口から落として気付かなかったのでしょうか。
謎が深まりますね。
■一日一新
三人屋 Audible