相続税の計算は、1億円の相続財産があったとしても、そのまま1億円に相続税率をかけて計算するほど単純なものではありません。
相続税には基礎控除や各種特例があり、実際に課税される金額は思っているよりもずっと少なくなるケースが少なくありません。
今回は、1億円の財産があるケースで、相続税がどのくらいになるのかザックリと計算してみたいと思います。
1億円に相続税率がかかるわけではない
まず、相続税には「基礎控除」があります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、
3,000万円+600万円×3=4,800万円が控除されます。
さらに、一般的な相続では次のような特例がよく使われます。
- 小規模宅地等の特例:自宅の土地については評価額を最大80%減額できる
- 生命保険金の非課税枠:500万円×法定相続人の数まで非課税
- 配偶者の税額軽減:配偶者は、相続する財産が原則1億6,000万円までは相続税がかからない
つまり、1億円の財産があっても、これらの制度がありますので、実際に課税対象となる金額は小さくなります。
また、税額が出たとしても配偶者が相続する分については「配偶者の税額軽減」で結果的に無税となるケースも多いです。
実際に計算してみる
今回は、次のような前提で計算してみましょう。
相続人:配偶者、子ども2人
財産の内訳:
- 土地:3,000万円
- 建物:500万円
- 死亡保険金:1,500万円
- 預金・株式:5,000万円
- 葬式費用:200万円
相続税の計算では、まず各財産の評価を行い、それらを合計して「課税価格の合計額」を求めます。
このとき、「小規模宅地等の特例」や「生命保険金の非課税枠」も反映されます。
計算すると次のようになります。
土地 3,000万 − 小規模宅地等の特例 2,400万(3,000万×0.8)
+ 建物 500万
+ 死亡保険金 1,500万 − 非課税 1,500万(500万×3)
+ 預金・株式 5,000万
− 葬式費用 200万
= 5,900万円
この5,900万円から基礎控除4,800万円を差し引きます。
5,900万円 − 4,800万円 = 1,100万円
この1,100万円が「課税遺産総額」です。
ここに直接税率をかけるわけではなく、一度この課税遺産総額を法定相続分で按分します。
配偶者が1/2、子ども2人がそれぞれ1/4ずつとすると、
配偶者550万、子ども275万ずつとなります。
この金額に対して相続税率を適用します。
今回のケースでは、いずれも10%の税率が適用されます。
配偶者:550万 × 10% = 55万円
子ども:275万 × 10% = 27.5万円 × 2 = 55万円
合計 110万円
そして、これで終わりではなく、実際に誰がどの財産を相続したかによって税額を再配分します。
もし法定相続分どおりに分ければ、子ども2人がそれぞれ27.5万円ずつ納税し、
配偶者は「配偶者の税額軽減」により無税となります。
仮に配偶者がすべての財産を相続した場合でも、同様に配偶者の税額軽減が適用され、結果的に納税は発生しません。
結局はケースバイケース
今回の計算はあくまで一例です。
実際の相続では財産の内訳や相続人の人数によって結果は大きく変わります。
たとえば、同じ1億円の財産でも現金や有価証券が多い場合と、不動産が多い場合とでは特例の影響も変わってきますので、自ずと相続税額も変わってきます。
ただし、「小規模宅地等の特例」や「生命保険金の非課税枠」を上手く活用すれば、課税される金額をかなり抑えられるケースが多いです。
また、相続人の人数に応じて増える「基礎控除」も、軽視できないポイントです。
人数が多いほど控除額が大きくなり、同じ財産でも税額に大きな差が出ることがあります。
そして、こうした控除や特例の恩恵は「一次相続」(最初の相続)だけでなく、「二次相続」(配偶者が亡くなったとき)にも影響します。
たとえば、一次相続で配偶者がすべてを相続して無税で終わっても、次の二次相続で子どもたちが多額の税負担を負うこともあります。
つまり、相続税の計算は「今いくら税金がかかるか」だけでなく、二次相続までを見据えてどう財産を分けるかという視点も大切になります。
■編集後記
最近、息子が冷蔵庫には美味しいものがあると認識したようで、自分から冷蔵庫を開けて何かいいものないかな~と確認するようになりました。
特にカゴメの缶ジュース(親がお中元でいただいた品物)がお気に入りで、「じゅーちゅ、じゅーちゅ」とせがむようになりました。
可愛いですが、健康のこともあるので与え過ぎに注意しないとなと思っています。
■一日一新
花屋さんが言うことには Audible
