わたしの近所には、おじいちゃんがひとりで経営していた動物病院がありました。かなりクセの強い先生で、近所の散歩仲間の間でも評価は賛否両論でしたが、わたしは結構好きでした。
ところが理由は分からないまま、ある日突然(といってももう1年くらい前になりますが)廃業してしまいました。少しショックを受けたのを覚えています。
廃業後しばらくしてから、動物病院の看板がいつのまにか撤去されていました。きちんと看板まで撤去して事業を清算している様子を見て、「ちゃんと終わらせたんだな。あの先生らしいな。」と妙に印象に残りました。
そして、先日、久しぶりに愛犬と一緒にその動物病院の前を通りましたが、愛犬は動物病院のドアの前でクンクンしていました。たぶん愛犬も先生に会いたいのかなと思ったりしました。
ということで?今回は、廃業したあとにお店の看板を撤去した場合の取り扱いについてザックリ書いてみようと思います。
廃業年に撤去した場合はその年の経費で落とす
廃業した年のうちに看板を撤去したのであれば、その費用は廃業年の経費として処理することになります(廃業日後に撤去したとしてもその年の経費で落とせば問題ないかと)。
看板の撤去に関する費用は、
- 看板の撤去費用
- 看板そのものの未償却残高(簿価)の資産損失
に分かれ、資産損失については少し難しい話もありますが、大抵の場合は、簿価をそのまま廃棄損等の科目で経費に落とせば問題ないかなと思います。
なお、個人の事業用資産の取り壊しに関する論点では、取り壊しの理由によっては必ずしも経費にならないケースもありますが、廃業に伴ってお店の看板を撤去するという状況であれば、事業の清算の一環と整理でき、特段問題になることは少ないかなと思います。
廃業年の翌年以降に撤去した場合
注意したいのが、廃業した年には看板を撤去せず、翌年以降になってから撤去した場合です。
この場合、撤去した年には事業所得の申告をしないはずです。そのため、撤去費用をその年の経費として処理することはできず、更正の請求という手続きを利用して、廃業年に遡って経費を計上することになります。
更正の請求の期限は、
- 廃業年分の確定申告の法定申告期限から5年以内
- 実際に撤去した日から2か月以内
のいずれか遅い日までとされています。
また、廃業年の事業所得が少なく、撤去費用や看板の簿価の方が大きい場合には、さらに廃業年の前年に遡ることも可能です(前年で引けない分は切り捨てです)。
ただし注意したいのは、撤去費用を経費として認めてもらうためには、あくまで事業の清算の一環として行われた撤去であることが前提になる点です。
つまり、廃業してから長期間が経過していると、「すでに事業とは無関係で、単なる家事費ではないか」と見られる可能性も否定できません。このあたりについて明確な年数の基準があるわけではなく、判断が難しいところかなと思います。
個人的な感覚としては、遅くとも廃業年の翌年中くらいまでに撤去しておけば、まず問題にならないかなと思いますがどうでしょうか。
まあ、動物病院等のお店の看板の撤去なら事業の清算であることは明白なのでどうこう言われないのかなとも思います。。
それこそ、廃業から5年以上経過してから撤去して、それから2ヵ月以内に更正の請求となると、ちょっと間が空きすぎのように感じますがどうでしょうかね。
まとめ
廃業後にお店の看板を撤去した場合の取り扱いは、撤去した時期によって考え方が変わります。
廃業年中に撤去したのであれば、その年の経費として処理すれば足ります。一方、廃業年の翌年以降に撤去した場合は、更正の請求により廃業年に遡って処理する必要があります。
また、いずれの場合も、事業の清算として行われた撤去であることがポイントとなってきます。
特に廃業後、長期間看板を放置してそれから撤去となると、税務上経費として認められてもらえないリスクは否定できないかなと思います。
■編集後記
「育休もらい逃げ」という言葉があるそうですね。
わたしの妻もその予備軍でしたが、今のところは無事に復職しています。
それでも「2人目を産むなら、それまでは今の会社は辞められないかなあ」といった話は、最近もちょいちょい妻の口から聞くことがあります。
わたし自身は育休をもらえる立場でもないので、このあたりを深く考えたことは正直あまりなく、「もらえるなら、もらえればいいんじゃない?」くらいの感覚でした。
ただ、「復職」が前提の制度だと考えると、育休を取ってすぐに辞めるのは、たしかにちょっと違うよなあと、今さらながら思ったりしています。
■一日一新
鶯ボール ちゃんぽん味
