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免税事業者が課税事業者になった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整

税金

今回は免税事業者が課税事業者になった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整についてまとめてみたいと思います。※個人を前提に書いていますが法人でも同様の制度があります

制度の概要

消費税は預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を納めるのが基本です。そしてこの支払った消費税は支払いをした年の申告で差し引くのが原則になります。


そのため免税事業者の期間に仕入れた棚卸資産に係る消費税については、仕入れた年は確定申告をしないわけなので差し引くことがないことになります。当然といえば当然ですが。


一方で棚卸資産については仕入れた年に売れずに翌年以降に売れることもあるわけです。そうすると課税事業者になった年に売れてその売上に係る消費税を預かった消費税として納めることもあるわけですが、対応する支払った消費税が引けないという不都合が生じます。


会計や税金の世界では売上と仕入は対応して計上するという考え方がありますが、消費税も同様に考えて対応する支払った消費税が引けないという状況はよろしくないと考えます。


そのため、免税事業者が課税事業者になった場合は、その免税事業者に該当する最後の年の年末時点の棚卸資産に係る消費税について、課税事業者になった年の消費税の申告で差し引くことができることになっています。

棚卸資産の調整をする際の注意点

棚卸資産の調整を適用する際の注意点を思いつくままに書いてみます。

簡易課税や2割特例を適用する場合は適用できない

簡易課税や2割特例を適用する場合は適用できません。これらの特例は預かった消費税の一定の割合を支払った消費税とみなして納税額を計算することになりますが、この計算過程において棚卸資産の調整分も追加で控除することはできません。

免税事業者期間中に仕入れた棚卸資産ならいくら古くても対象になる

この調整の対象になる棚卸資産は免税期間中に仕入れた棚卸資産なら基本的に全てが対象にもなります。もうそんなにないと思いますが、旧税率(8%以下の税率)時代に仕入れた棚卸資産も調整の対象になります。

課税事業者になった年に売れなくても調整の対象になる

概要のところで売上と仕入は対応させるべきという考え方を紹介しましたが、その考え方を厳密に踏襲するなら、調整をする年にその棚卸資産が売れることが必要になりますが、そこまでは求められていません。課税事業者になった年に売れるかどうかは問わずに調整してしまって良いことになっています。

この点は、仮に売れたことも要件にしてしまうと、延々と調整の対象になるかどうかの判断が続くことになる可能性がありそれは大変だろうということなのかと考えています。

棚卸資産についてインボイスがあるかどうかは問わない

去年からインボイスが始まって、それ以降に仕入れた棚卸資産について調整を考える際に、インボイスの発行がなかった棚卸資産だと対象にならないのではないかと考えるかもしれません。この点はインボイスのあるなしに限らず免税期間中に仕入れた棚卸資産であれば対象になります。

インボイスの趣旨を考えると対象になるのはおかしいとは思いますが簡便性を取ったのだと思います。

税率に注意

仕入れた棚卸資産が軽減税率の対象資産なら調整する金額は8%分になります。
また、旧税率時代に仕入れた棚卸資産を調整するならそれぞれの税率で調整をします。

付随費用も調整の対象

調整の対象になる金額は仕入金額だけでなく棚卸資産の取得価額を構成する付随費用も対象です。付随費用は引取運賃や荷造費用が代表例として挙げられます。なお、こういった付随費用が棚卸資産の勘定科目以外で計上されていれば、調整の対象にできません。

明細の作成と保存

この特例を適用するには、その対象となる棚卸資産の明細を作成し、申告期限から7年間保存しなければなりません。

高額な棚卸資産を調整の対象にする場合

1個あたりの取得価額が税抜き1,000万以上の棚卸資産を調整の対象にする場合は、調整をした年から3年間は免税事業者になれないことや簡易課税の適用ができないといった制限を受けることになります。

相続で事業承継した場合も対象になることも

課税事業者である相続人が相続で免税事業者だった被相続人の事業を承継した場合に、被相続人が免税事業者の期間に仕入れた棚卸資産を引き継いだ場合は、この特例の適用が可能なこともあります。

まとめ

今回は棚卸資産の調整についてまとめてみました。小売業とかだと免税事業者でもそれなりに在庫を抱えているケースもあるので注意が必要ですね。2割特例は申告時点での判断で問題ありませんが、簡易課税は事前の届出が必要なので、今回紹介した特例を加味して簡易課税と原則課税のどちらを適用するか判断が必要なこともあるので注意しましょう。


今回は免税事業者が課税事業者になったパターンを取り上げましたが、逆のパターンでの調整もあります。これは次回触れたいなと思います。


■編集後記
昨日は久しぶりにサブウェイへ行ってきました。
妻と一緒にサブウェイへ行くと妻が必ずといっていいほど「アボカドベジーがお得だ」という話をしている気がします。
昨日も何度目かわからないその話をしていました。
えびアボカドは言わずとしれたサブウェイの人気メニューですが、妻曰く味はほぼ一緒なのに安くてお得とのことです。

■一日一新
サブウェイ 濃厚チーズタコス